髪全体のボリュームが減ったり、分け目や頭頂部の地肌が目立ったりすると、「FAGAなのか、びまん性脱毛症なのか」と迷うことがあります。
ここで注意したいのは、「びまん性」という言葉は薄毛が広い範囲に及ぶ状態・分布を表すためにも使われ、必ずしも一つの原因や一つの病名だけを意味するわけではないことです。一方、FAGAと呼ばれることのある女性型脱毛症(female pattern hair loss)は、女性にみられる一定のパターンを持つ薄毛として扱われます。
この記事では、FAGA・女性型脱毛症と「びまん性脱毛症」と呼ばれる状態の違いを、症状の現れ方、原因の考え方、経過、診断、治療の選び方から比較します。
FAGAとびまん性脱毛症の違いは?最初に整理したい4つのポイント
両者は見た目が似ることがあります。「広く薄いからびまん性」「分け目が薄いからFAGA」と見た目だけで分けないことが重要です。
FAGAは女性型脱毛症を指す言葉として使われる
FAGAという言葉は女性のパターン型脱毛を指して使われますが、日本皮膚科学会では、女性では男性ホルモン依存性だけで病態を説明できない場合があることから「女性型脱毛症(female pattern hair loss)」という名称が用いられています。
【女性型脱毛症の基本】
- 女性にみられるパターン型の薄毛
- 頭頂部の比較的広い範囲が薄くなることがある
- 更年期以降に多くみられる
- 女性の薄毛すべてを指す言葉ではない
「女性の薄毛=FAGA」と一括りにするのではなく、女性型脱毛症という病態に当てはまるかを確認します。
この記事では検索上の分かりやすさからFAGAという語も使いますが、基本用語は「女性型脱毛症」とします。
「びまん性」は広い範囲に薄毛がある状態を表すことがある
「びまん性」は、病変や変化が一か所に限局せず広い範囲に及んでいることを表す言葉です。そのため、「びまん性脱毛症」という表現だけでは原因が一つに決まるとは限りません。
| 用語 | この記事での整理 |
|---|---|
| FAGA | 女性型脱毛症を指して使われることがある呼称 |
| 女性型脱毛症 | 女性にみられる一定のパターンを持つ脱毛症 |
| びまん性 | 広い範囲に変化が及ぶ状態・分布を表す表現 |
| びまん性の脱毛 | 原因を確認する必要がある広範囲の脱毛状態 |
「びまん性脱毛症」という名称だけから治療法を決めないことが大切です。
びまん性という言葉は、原因よりも「薄くなり方」を表している場合があると理解しましょう。
女性型脱毛症自体も広い範囲が薄く見えることがある
女性型脱毛症では頭頂部の比較的広い範囲が薄くなるため、見た目としては「びまん性に薄い」と感じることがあります。そのため、両者を「狭い範囲か広い範囲か」だけで区別することはできません。
【見た目だけで区別しにくい理由】
- 女性型脱毛症も広い範囲が薄くなる
- 分け目の地肌が目立つ場合がある
- 全体のボリューム低下として気づくことがある
- 別の原因による広範囲の脱毛と重なる場合もある
薄毛の分布だけでなく、抜け毛の増え方や発症前の出来事なども確認します。
「全体的に薄いからFAGAではない」という判断もできません。
最終的な違いは原因と経過を含めて判断する
女性型脱毛症と、ほかの原因によるびまん性の脱毛では、治療の考え方が異なります。見た目に加え、発症時期、進行速度、体調変化、服薬などを整理する必要があります。
【区別のために確認する情報】
- 徐々に進んだか急に始まったか
- 頭頂部中心か頭部全体か
- 抜け毛が急増した時期があるか
- 病気・手術・出産・減量・服薬などの変化があったか
これらを組み合わせて原因を確認します。
名称よりも、「なぜ広く薄くなっているのか」を確認することが重要です。
症状・薄くなり方はどう違う?4つの比較ポイント
女性型脱毛症と広範囲の脱毛では、薄毛の見え方だけでなく、抜け毛の増え方や経過に違いがみられる場合があります。
女性型脱毛症では頭頂部のパターンを確認する
日本皮膚科学会のガイドラインでは、女性型脱毛症は女性では頭頂部の比較的広い範囲の頭髪が薄くなるパターンとして観察されると説明されています。
- 分け目が以前より目立つ
- 頭頂部の地肌が透けやすい
- トップのボリュームが低下した
- 頭頂部に細い毛が増えたように感じる
男性の典型的なM字型だけを基準に女性型脱毛症を判断しません。
女性型脱毛症では、頭頂部を中心としたパターンと経時変化を確認します。
広範囲の脱毛では頭部全体の変化を確認する
原因によっては、頭頂部だけでなく側頭部や後頭部を含めて全体的に毛量が減ったように感じる場合があります。特に毛周期が影響を受けるタイプの脱毛では、抜け毛の増加から気づくことがあります。
| 確認点 | 女性型脱毛症 | ほかのびまん性の脱毛 |
|---|---|---|
| 目立つ場所 | 頭頂部を中心に確認 | 頭部全体に及ぶ場合がある |
| 抜け毛 | 本数だけでは判断できない | 急な増加から気づく場合がある |
| 経過 | 徐々に進むことが多い | 原因によって急に始まることがある |
| 原因確認 | パターンと除外診断 | 発症前の出来事・病気等も重要 |
この表は自己診断の基準ではなく、医療機関へ伝える情報を整理するための比較です。
頭頂部以外も含めて全体的に変化しているか確認しましょう。
急な抜け毛の増加があるかを見る
日本皮膚科学会の一般向け情報では、大きな手術、重症の感染症、妊娠、過激なダイエットなどの後に毛周期が影響を受け、抜け毛が増える休止期脱毛が知られていると説明されています。
- 大きな病気や手術がなかったか
- 感染症など大きな体調変化がなかったか
- 出産など身体状況の変化がなかったか
- 極端なダイエットをしていなかったか
発症との時間関係も含め、診察時に伝えます。
急に抜け毛が増えた場合は、女性型脱毛症だけを前提にしないようにしましょう。
円形・部分的な脱毛や強い炎症は別に考える
円形・類円形の脱毛、境界のはっきりした部分脱毛、強い赤みや痛みなどがある場合は、「FAGAかびまん性脱毛症か」という二択だけで考えないことが重要です。
- 円形・類円形の脱毛
- 一部分だけ急に毛がなくなった
- 眉毛などほかの部位にも脱毛がある
- 強い赤み・痛み・かゆみがある
薄毛の分類を二つに限定せず、ほかの脱毛症も含めて考えましょう。
原因はどう違う?女性型脱毛症とびまん性の脱毛を4つの視点で比較
原因を比較するときは、女性型脱毛症を一つの病態として捉え、びまん性の脱毛では背景となる出来事や病気などを幅広く確認します。
女性型脱毛症は男性ホルモンだけでは説明できない
女性型脱毛症はFAGAとも呼ばれますが、日本皮膚科学会では女性の病態を男性ホルモン依存性だけでは説明できない場合があるとしています。
【女性型脱毛症の原因を考える際の注意】
- 男性AGAの原因をそのまま当てはめない
- 女性ホルモン低下だけに単純化しない
- 年齢だけで診断しない
- ほかの脱毛原因を除外する
「ホルモンバランスの乱れ」という一言だけで原因を説明しないことが大切です。
女性型脱毛症は単一のホルモン要因だけで説明しないようにしましょう。
休止期脱毛では発症前の体調変化などが手掛かりになる
びまん性の脱毛を起こす代表的な状態の一つに休止期脱毛があります。大きな身体的変化などをきっかけに毛周期が影響を受け、抜け毛が増える場合があります。
| 確認する背景 | 診察時に伝える内容 |
|---|---|
| 病気・感染症 | 発症時期と重症度 |
| 手術 | 手術を受けた時期 |
| 出産 | 出産と抜け毛の時期 |
| ダイエット | 急激な体重・食事の変化 |
きっかけがあっても、それだけで休止期脱毛と自己診断することはできません。
広範囲の抜け毛では、薄毛が始まる前の全身状態も重要な情報です。
内科的な病気や薬剤が脱毛に関係する場合もある
日本皮膚科学会の一般向け情報では、甲状腺疾患や膠原病などの内科的な病気、薬剤などによって脱毛が起こる場合があると説明されています。
- 持病・治療中の病気
- 現在使用している処方薬
- 薬を開始・変更した時期
- 薄毛以外の体調変化
びまん性の脱毛では、頭皮だけでなく全身状態や服薬も確認しましょう。
複数の要因が重なる可能性もある
女性型脱毛症がある人に別の原因による抜け毛が重なるなど、薄毛を一つの原因だけで説明できない場合もあります。
- 以前から頭頂部が薄く、最近急に抜け毛が増えた
- パターン型の薄毛に頭皮炎症が加わった
- 長期的な薄毛の途中で大きな体調変化があった
- 治療中に別の脱毛パターンが現れた
以前からの変化と最近起きた変化を分けて伝えると、診察時の整理に役立ちます。
「FAGAか、それ以外か」の二択ではなく、複数の原因が重なる可能性も考えます。
診断・治療の考え方はどう違う?4つの重要ポイント
見た目が似ていても原因が違えば治療も変わります。そのため、治療法を先に決めるのではなく、原因確認を優先します。
女性型脱毛症ではパターンと除外すべき原因を確認する
女性型脱毛症では頭頂部を中心とした薄毛の分布や経過を確認するとともに、別の脱毛原因がないかを検討します。
【受診時に整理したい情報】
- 薄毛に気づいた時期
- 最初に気になった部位
- 徐々に進んだか急に始まったか
- 過去写真・家族歴・服薬状況
女性型脱毛症と診断されれば、その病態に応じた治療を検討します。
分け目の見た目だけで診断せず、経過とほかの原因を確認します。
女性型脱毛症ではミノキシジル外用が推奨されている
日本皮膚科学会の2017年版ガイドラインでは、女性型脱毛症に対するミノキシジル外用は推奨度Aとされています。日本皮膚科学会の一般向けQ&Aでも、女性型脱毛症に最も勧められる薬剤としてミノキシジル外用剤が挙げられています。
| 確認項目 | 治療前に見ること |
|---|---|
| 診断 | 女性型脱毛症に当てはまるか |
| 製品 | 女性が対象の承認製品か |
| 安全性 | 禁忌・副作用・注意事項 |
| 継続 | 使用方法・費用・続けやすさ |
具体的な製品を使用する場合は、最新の添付文書を確認します。
女性型脱毛症の治療と、原因不明のびまん性脱毛への対応を同じにしないことが重要です。
びまん性の脱毛では原因に応じた対応が基本になる
広範囲の脱毛が休止期脱毛や全身疾患などに関連している場合、女性型脱毛症用の治療だけを行っても原因への対応にならないことがあります。
- 体調変化があれば基礎となる状態を確認する
- 薬剤との関係は処方医・薬剤師へ相談する
- 極端な食事制限があれば栄養状態を確認する
- 頭皮疾患があれば皮膚科で治療を検討する
原因が解消すれば必ず一定期間で元通りになる、といった断定も避けます。
男性AGAの治療薬を女性へそのまま当てはめない
2017年版ガイドラインでは、女性型脱毛症に対するフィナステリド・デュタステリド内服は推奨度Dで、行うべきではないとされています。ミノキシジルについても外用と内服では位置づけが異なります。
【治療情報で区別すること】
- 男性AGAと女性型脱毛症
- ミノキシジル外用と内服
- 承認薬と未承認の治療
- 医薬品と育毛目的の製品
女性の薄毛治療は、男性向けAGA情報をそのまま流用しないことが重要です。
診断と性別に合った治療の位置づけを確認しましょう。
FAGAかびまん性の脱毛か迷ったときの確認方法4つ
セルフチェックだけで病名を確定することはできませんが、診察に役立つ情報を整理することはできます。
同じ条件で分け目・頭頂部・側頭部を撮影する
薄毛の分布を確認するため、頭頂部だけでなく複数の部位を同じ条件で撮影します。
【記録したい部位】
- 分け目
- つむじ・頭頂部
- 左右の側頭部
- 生え際
髪を乾かし、同じ照明・角度・分け目で記録します。
一点の写真ではなく、頭部全体の分布を記録しましょう。
抜け毛が増えた時期と体調変化を時系列で整理する
急な抜け毛がある場合は、その前後に病気、手術、出産、減量、薬の変更などがなかったか時系列で整理します。
| 時期 | 記録する内容 |
|---|---|
| 薄毛に気づく前 | 病気・手術・出産・減量など |
| 抜け毛が増えた頃 | 量の変化・頭皮症状 |
| 現在 | 薄毛の範囲・進行 |
| 服薬 | 開始・変更時期 |
因果関係を自分で確定せず、診察時の材料として使います。
広範囲の脱毛では「いつ何があったか」の記録が原因確認に役立ちます。
急激・部分的・炎症を伴う変化は早めに相談する
徐々に進む薄毛だけでなく、急激な抜け毛、円形・部分的な脱毛、強い頭皮症状がある場合は皮膚科などへの相談を検討します。
【相談を考えたい変化】
- 短期間で抜け毛が大きく増えた
- 円形・部分的な脱毛がある
- 薄毛以外の体調変化がある
- 赤み・痛み・強いかゆみがある
原因が分からないまま複数の育毛製品を追加するより、まず診断を受けるほうが原因に合った対応を選びやすくなります。
典型的でない変化がある場合は、「FAGAかびまん性か」の自己判断にこだわらないようにしましょう。
治療前に「診断名」と「治療目的」を確認する
薄毛治療を受ける場合は、何を根拠にどの脱毛症と判断したのか、その治療は何を目的としているのかを確認します。
- 考えられる診断名
- ほかの原因をどう確認したか
- 提案された治療の目的
- 効果・副作用・費用・継続方法
「女性の薄毛だから同じ治療」ではなく、自分の原因に合った治療かを確認します。
FAGAと呼ばれる女性型脱毛症は、女性にみられる一定のパターンを持つ薄毛で、頭頂部の比較的広い範囲が薄くなることがあります。一方、「びまん性」は広い範囲に変化が及ぶ状態を表すためにも使われ、びまん性に薄いというだけでは原因を一つに決められません。
休止期脱毛のように、病気、手術、感染症、出産、極端なダイエットなどの後に抜け毛が増える状態もあります。また、内科的な病気や薬剤などが脱毛に関係する場合もあります。女性型脱毛症自体も広く薄く見えるため、見た目だけで両者を区別するのではなく、薄毛の分布・進行速度・抜け毛の増え方・発症前の出来事を組み合わせて確認することが重要です。
「FAGAかびまん性脱毛症か」という二択だけで考えず、広範囲の薄毛を起こしている原因を確認して治療を選びましょう。







