円形脱毛症の脱毛斑が複数できた状態は、一般に「多発型」と分類されます。ただし、脱毛斑の数が増えたからといって、個数だけで重症度や治療法が決まるわけではありません。
日本皮膚科学会の「円形脱毛症診療ガイドライン2024」では、通常型(斑状型)のうち脱毛斑が単発のものを単発型、複数の脱毛斑を認めるものを多発型としています。治療では脱毛面積、進行速度、年齢、罹病期間なども考慮されます。
この記事では、多発型の定義、症状と進行、診断、治療の考え方、受診・経過観察のポイントを整理します。
多発型円形脱毛症とは?最初に知りたい4つのこと
多発型は、円形脱毛症のうち複数の脱毛斑を認める病型です。単に「抜け毛が多い」という意味ではありません。
複数の脱毛斑がある通常型を多発型という
日本皮膚科学会の2024年版ガイドラインでは、通常型(斑状型)のうち脱毛斑が単発のものを単発型、複数の脱毛斑を認めるものを多発型と分類しています。
- 単発型=脱毛斑が単発
- 多発型=複数の脱毛斑
- 全頭型=頭部全体へ拡大
- 汎発型=全身へ拡大
脱毛斑の数だけで重症度のすべてが決まるわけではなく、脱毛面積なども評価します。
「複数あること」が多発型の基本的な分類ポイントです。
円形脱毛症は自己免疫性疾患
円形脱毛症は、成長期毛包を主な標的とする自己免疫性疾患です。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 病態 | 自己免疫反応 |
| 脱毛 | 非瘢痕性 |
| 年齢 | 幅広い年代で発症 |
| 部位 | 頭髪以外もあり得る |
精神的ストレスだけが原因の病気ではありません。
多発した理由をストレスだけに決めつけないようにしましょう。
脱毛斑は典型的な円形だけとは限らない
典型例は境界明瞭な円形から類円形ですが、脱毛斑が融合して不規則な形になる場合もあります。
- 円形
- 類円形
- 複数斑の融合
- 不規則な形
多発型では新しい脱毛斑が生じたり、既存の斑が広がったりする経過にも注意します。
数だけでなく形・範囲・経過を記録しましょう。
眉毛・睫毛・体毛にも生じることがある
円形脱毛症は毛組織がある全身の部位に生じ得ます。
- 眉毛
- 睫毛
- 髭
- 体毛
頭部の多発型だけでなく、他部位の脱毛も診察時に伝えます。
頭髪以外の変化も病勢評価の情報になります。
多発型で確認したい症状と進行4つ
多発型では、脱毛斑の数・面積・拡大の速度、頭髪以外の症状などを確認します。
新しい脱毛斑が増えていないか
円形脱毛症は経過が多様で、多発型では複数の脱毛斑が同時または経過中にみられます。
- 新しい脱毛斑
- 既存斑の拡大
- 斑同士の融合
- 再発
日本皮膚科学会は再発や徐々に多発・拡大する場合に早めの診察を勧めています。
多発・拡大しているなら自己判断で長く待たないようにしましょう。
頭部全体に占める脱毛範囲を見る
ガイドラインでは重症度評価に頭部の脱毛面積が用いられます。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 軽症 | 頭部脱毛25%未満 |
| 中等症 | 25%以上50%未満 |
| 重症 | 50%以上 |
| 全頭型 | 頭部全体へ拡大 |
脱毛斑の「個数」だけでは治療方針を決められません。
多発型でも脱毛面積によって病勢の捉え方が変わります。
活動期の頭皮所見がないか
通常は自覚症状が乏しい一方、活動期には軽度のかゆみ、刺激感、浮腫性の淡い紅斑を伴うことがあります。
- 軽いかゆみ
- 刺激感
- 淡い紅斑
- 新しい脱毛
強い鱗屑、膿、強い痛みなどがある場合は白癬など他疾患との鑑別も必要です。
強い頭皮症状をすべて円形脱毛症の症状と考えないようにしましょう。
爪や他部位の毛も確認する
円形脱毛症では爪の点状陥凹などがみられることがあり、眉毛・睫毛・体毛にも脱毛が生じ得ます。
- 爪の変化
- 眉毛
- 睫毛
- 体毛
頭部だけでなく全身の毛・爪の変化を医師へ伝えます。
診察では脱毛斑以外の所見も重要です。
多発型円形脱毛症はどう診断する?4つの確認
診断では脱毛斑の見た目だけでなく、問診・視診・トリコスコピーなどを組み合わせ、似た脱毛症を除外します。
脱毛斑の数・範囲・経過を確認する
いつから、どの部位に、いくつの脱毛斑ができ、拡大しているかを確認します。
- 発症時期
- 脱毛斑の数
- 脱毛面積
- 拡大・再発
過去写真があると経過を把握しやすくなります。
多発型の診断と病勢評価は別々に考えましょう。
トリコスコピーで毛髪を拡大観察する
2024年版ガイドラインでは、トリコスコピーが円形脱毛症の診断や活動性評価に有用とされています。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 黒点 | 活動性所見の一つ |
| 断裂毛 | 活動性所見の一つ |
| 漸減毛 | 特徴的所見 |
| 再生毛 | 経過評価 |
所見は病期によって変わり、一つだけで確定するものではありません。
拡大所見と臨床経過を組み合わせます。
白癬・抜毛症などと鑑別する
頭部白癬、抜毛症、瘢痕性脱毛症など、部分脱毛を起こす他疾患との鑑別が必要です。
- 頭部白癬
- 抜毛症
- 瘢痕性脱毛症
- その他の脱毛症
頭部白癬では鱗屑や折れ毛などがみられることがあり、感染の検査が必要になる場合があります。
多発する脱毛斑=必ず円形脱毛症、ではありません。
必要に応じ追加検査を行う
多くは肉眼所見とトリコスコピーから診断できますが、他疾患との鑑別が難しい場合には頭皮生検などが検討されます。
- 頭皮生検
- 真菌検査
- 血液検査
- その他の原因検索
すべての多発型で同じ検査を行うわけではありません。
検査は疑う疾患に応じて選ばれます。
多発型円形脱毛症の治療はどう決める?4つの考え方
治療は「多発型」という名称だけでは決まらず、年齢、脱毛面積、進行速度、罹病期間などを考慮します。
脱毛範囲によって治療選択が変わる
限局した脱毛と広範囲の脱毛では、推奨される治療や実施しやすさが異なります。
- 脱毛面積
- 脱毛斑の数
- 進行速度
- 年齢
日本皮膚科学会Q&Aでは代表的治療としてステロイド局所注射、局所免疫療法、ステロイド外用療法などが説明されています。
治療名だけでなく自分の病型・範囲に適するかを確認しましょう。
代表的な治療にも適応や注意点がある
治療は年齢や範囲、重症度などによって使い分けられます。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| ステロイド外用 | 実施しやすい治療の一つ |
| ステロイド局所注射 | 範囲等を考慮 |
| 局所免疫療法 | 広範囲例でも検討 |
| 全身治療 | 重症度等で検討 |
局所注射は脱毛範囲が広いほど注射回数が増え、小児には行いにくい面があります。
広範囲・重症例では全身治療が検討されることがある
2024年版ガイドラインには、重症例等を対象とするJAK阻害薬を含む治療選択肢が記載されています。
- 重症度
- 年齢
- 既往・感染症リスク
- 治療歴
薬剤の承認年齢や安全使用情報は更新されるため、最新の電子添文・学会安全使用マニュアルを確認する必要があります。
薬剤名・対象年齢・用法は公開時点の最新一次情報で再確認しましょう。
治療効果や経過には個人差がある
多発型でも自然に改善する例がある一方、再発・拡大や全頭型等へ移行する例もあり、経過は一様ではありません。
- 改善
- 再発
- 多発・拡大
- 病型の変化
ガイドラインの予後データは集団の報告であり、個人の回復を保証する数字ではありません。
「多発型なら必ず治る・治らない」と断定しないことが重要です。
多発型で受診・経過観察するときの4つのポイント
脱毛斑が複数ある場合は、現在の数だけでなく新しい斑が増えているか、範囲が拡大しているかを継続して確認します。
多発・拡大しているなら早めに診察を受ける
日本皮膚科学会は、何度も再発したり徐々に多発・拡大する場合には早めの診察を勧めています。
- 新しい脱毛斑
- 範囲拡大
- 再発
- 斑の融合
急激に頭部全体へ脱毛が進む場合も早期の診察が勧められています。
進行中の多発型は自己流ケアだけで様子を見続けないようにしましょう。
写真で数と範囲を記録する
同じ条件で頭部全体を撮影すると、新しい脱毛斑や範囲変化を把握しやすくなります。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 正面 | 生え際 |
| 頭頂 | 上から |
| 側頭・後頭 | 見えにくい部位 |
| 脱毛斑 | 近接写真 |
自分で見えにくい後頭部は家族等に撮影を頼む方法もあります。
写真は診断ではなく経過記録として使いましょう。
頭皮に強い症状があれば他疾患も確認する
強い鱗屑、膿、痛みなどがある場合は頭部白癬など感染症を含めて鑑別します。
- 強い鱗屑
- 膿
- 痛み
- 腫れ
頭部白癬にステロイドを誤用すると悪化する場合があります。
症状が非典型なら自己判断で円形脱毛症の薬を使わないようにしましょう。
治療を自己中断・変更しない
円形脱毛症の治療は病勢や副作用を確認しながら調整します。
- 使用薬
- 治療開始日
- 副作用
- 経過写真
特に全身治療では安全性確認が重要です。
効果が見えにくい、症状が変わった場合も処方医へ相談しましょう。







