円形脱毛症と抜毛症の違いは?脱毛部分の特徴と原因を解説

円形脱毛症と抜毛症の違いは?脱毛部分の特徴と原因を解説

髪が部分的に抜けていると、円形脱毛症なのか、自分で毛を抜くことによって生じる抜毛症(トリコチロマニア)なのか、見た目だけでは分かりにくい場合があります。どちらも斑状の脱毛や切れ毛、黒い点状の毛がみられることがあり、皮膚科でも鑑別が必要になる疾患です。

円形脱毛症は毛包を標的とする自己免疫性疾患です。一方、抜毛症は毛を繰り返し抜く行動によって脱毛が生じる精神疾患で、本人が行動を十分に自覚していない場合もあります。「抜毛症なら本人が意図的に抜いているはず」と決めつけないことが重要です。

この記事では、円形脱毛症と抜毛症について、原因、脱毛部分の形、毛の長さ、トリコスコピー所見、受診・治療の違いを解説します。

円形脱毛症と抜毛症は何が違う?原因から比較

二つの疾患は、脱毛が起こる仕組みが大きく異なります。円形脱毛症は自己免疫反応、抜毛症は反復する抜毛行動が中心です。

円形脱毛症は毛包を標的とする自己免疫性疾患

日本皮膚科学会「円形脱毛症診療ガイドライン2024」では、円形脱毛症は毛包を標的とする自己免疫性疾患とされています。典型的には円形から類円形の非瘢痕性脱毛斑を生じます。

【円形脱毛症の基本】

  • 自己免疫反応が病態の中心
  • 円形・類円形の脱毛斑が代表的
  • 単発から広範囲まで病型がある

「ストレスだけが原因」と単純化することはできません。

円形脱毛症は本人が毛を抜いたために起こる病気ではありません。

抜毛症は反復する抜毛行動によって脱毛が生じる

抜毛症(trichotillomania/hair-pulling disorder)は、自分の毛を繰り返し抜く行動によって脱毛が生じる疾患です。頭髪だけでなく、眉毛やまつ毛などが対象になることもあります。

比較項目 円形脱毛症 抜毛症
主な原因・病態 自己免疫反応 反復する抜毛行動
脱毛の成立 毛包への免疫反応で脱毛 毛を引き抜く・切断することで脱毛
代表的な部位 頭髪ほか全身の毛 頭髪、眉毛、まつ毛等
治療の方向 病型・重症度に応じた皮膚科治療 抜毛行動への治療・支援を中心に検討

原因が異なるため、円形脱毛症の薬だけで抜毛症の根本的な対応にはなりません。

抜毛症は脱毛部だけでなく抜毛行動そのものへの評価が必要です。

抜毛症は「癖」「わざと抜いている」と決めつけない

抜毛症では、毛を抜く行動への気づき方や状況は人によって異なります。緊張などを伴って意識的に抜く場合だけでなく、読書や勉強などの最中に自動的に手が毛へ向かう場合もあります。本人を責める対応は診断・治療につながりにくくなります。

【周囲が避けたい対応の例】

  • 「やめれば治る」と叱る
  • 本人が嘘をついていると決めつける
  • 無理に手を監視する
  • 脱毛だけを隠して原因を放置する

特に子ども・思春期では、家族だけで原因を断定せず医療者へ相談します。

抜毛症は意思の弱さではなく、治療対象となる行動・精神面の問題として扱います。

円形脱毛症と抜毛症が同時に存在する場合もある

円形脱毛症と抜毛症は鑑別対象ですが、どちらか一方しか起こらないとは限りません。円形脱毛症の病変を気にして触る・抜くなど、両方の要素が重なる例も報告されています。

併存を考える情報
  • 円形脱毛症らしい所見と不規則な切れ毛が混在する
  • 部位によって毛の長さや脱毛パターンが異なる
  • 既往の円形脱毛症がある
  • 抜毛行動も確認される

一つの所見だけでどちらかに決めず、頭皮・毛髪全体を評価します。

両疾患の所見が混ざる場合は併存も含めて診断します。

円形脱毛症と抜毛症は脱毛部分の見た目でどう違う?

典型例では脱毛斑の形や残っている毛の長さに違いがあります。ただし重なる所見も多く、見た目だけで確定することはできません。

円形脱毛症は境界の比較的明瞭な脱毛斑が代表的

円形脱毛症では、円形・類円形で境界が比較的明瞭な脱毛斑が代表的です。活動期には病変周囲に感嘆符毛、切れ毛、黒点などがみられることがあります。

円形脱毛症で確認される例
  • 円形・楕円形に見える脱毛斑
  • 病変周囲の短い毛・切れ毛
  • 黒点などの毛髪所見

ただし、びまん性など典型的な円形にならない病型もあります。

「きれいな丸形」だけが円形脱毛症ではありません。

抜毛症では毛の長さが不ぞろいで不規則な脱毛になりやすい

抜毛症では、毛を抜く・途中で切る行動が繰り返されるため、脱毛部にさまざまな長さの切れ毛が混在しやすいことが報告されています。脱毛斑の輪郭も不規則になることがあります。

見た目 円形脱毛症 抜毛症
脱毛斑 円形・類円形が代表的 不規則な形になりやすい
残存毛 病勢に応じ特徴的な短毛等 異なる長さの切れ毛が混在しやすい
毛の密度 病変部で大きく低下することがある 短毛・残存毛が混ざることがある
鑑別 臨床像とトリコスコピー等を合わせて判断

「短い毛があるから抜毛症」と単独所見で判断はできません。

抜毛症では異なる長さの毛が混在することが重要な手掛かりです。

眉毛・まつ毛など頭髪以外の脱毛も確認する

円形脱毛症でも抜毛症でも、頭髪以外の毛が減ることがあります。円形脱毛症では病型によって全身の毛へ広がる場合があり、抜毛症では本人が触りやすい眉毛・まつ毛などを抜く場合があります。

確認する例
  • 眉毛の一部または全体
  • まつ毛
  • ひげ
  • その他の体毛

部位だけで原因を決めず、抜け方や行動、毛髪所見を合わせて確認します。

頭髪以外の脱毛も両疾患で起こり得るため、原因判断には追加情報が必要です。

頭皮に傷・出血などがあれば機械的刺激も確認する

繰り返し毛を引っ張ると、毛幹の切断だけでなく頭皮への機械的刺激が加わる場合があります。円形脱毛症は通常、瘢痕を残さない脱毛症ですが、掻破や別の皮膚疾患があれば頭皮所見が加わることもあります。

頭皮で見ること
  • 引っかき傷・小さな出血
  • 毛幹の途中での切断
  • 赤み・鱗屑など別の皮膚症状
  • 瘢痕のような変化

強い炎症や瘢痕様変化があれば、ほかの脱毛症も含め皮膚科で確認します。

毛だけでなく頭皮への物理的刺激や皮膚症状も鑑別材料になります。

トリコスコピーでは円形脱毛症と抜毛症をどう見分ける?

両疾患には黒点や切れ毛など共通する所見があるため、トリコスコピーでは一つのサインではなく複数の所見の組み合わせを評価します。

円形脱毛症では黄点・黒点・感嘆符毛などを組み合わせて見る

円形脱毛症のトリコスコピーでは、黄点、黒点、切れ毛、感嘆符毛、軟毛などが報告されています。ただし、黄点や黒点、切れ毛の一部はほかの脱毛症でもみられるため、単独で確定所見とはしません。

確認される所見
  • 黄点
  • 黒点
  • 感嘆符毛・先細り毛

臨床像と複数のトリコスコピー所見を合わせて診断します。

円形脱毛症は一つの毛髪サインだけで診断しません。

抜毛症では異なる長さの切れ毛や特徴的な毛幹所見が手掛かりになる

抜毛症では、異なる長さの切れ毛に加え、V-sign、coiled hairs、hook hairs、flame hairs、tulip hairs、trichoptilosisなどが鑑別に役立つと報告されています。

所見 鑑別上の考え方
異なる長さの切れ毛 抜毛症でよくみられる手掛かり
V-sign・coiled hairs等 抜毛症を支持する所見として報告
黒点 両疾患でみられ得る
黄点 円形脱毛症に多いが単独では特異的でない

トリコスコピーは非侵襲的に毛髪・毛穴を拡大観察でき、鑑別に有用です。

抜毛症では機械的な毛幹損傷を反映する複数の所見を確認します。

黒点や切れ毛は両方にあるため単独では見分けられない

円形脱毛症でも活動期に黒点や切れ毛がみられ、抜毛症でも毛を引き抜く・折ることで同様の所見が生じます。研究でも両者の臨床・トリコスコピー所見が重なることが指摘されています。

誤解しやすい例
  • 黒点があるから必ず円形脱毛症
  • 切れ毛があるから必ず抜毛症
  • 黄点だけで円形脱毛症と断定する
  • 一枚の写真だけで病名を決める

毛髪所見、脱毛斑の形、経過、抜毛行動などを総合します。

共通所見があるため自己撮影の拡大写真だけで確定診断はできません。

判断が難しい場合は皮膚科で鑑別する

円形脱毛症診療ガイドラインでも、臨床所見が明確でない場合には鑑別診断が必要です。特に小児・思春期の限局性脱毛では、抜毛症は重要な鑑別対象になります。

診察で整理すること

  • 脱毛斑の形・分布
  • 毛の長さ・切断パターン
  • トリコスコピー所見
  • 抜毛行動や発症経過

必要に応じてほかの局所性脱毛も鑑別します。

円形脱毛症と抜毛症は見た目が似るため、迷う場合は皮膚科で確認します。

円形脱毛症と抜毛症では治療・相談先がどう違う?

円形脱毛症は皮膚科治療が中心ですが、抜毛症では毛を抜く行動への治療が重要です。皮膚科で鑑別した後、必要に応じて精神科・心療内科等との連携を検討します。

円形脱毛症は病型・重症度に応じて皮膚科で治療する

円形脱毛症では、ステロイド外用・局所注射、局所免疫療法、広範囲で難治の場合のJAK阻害薬など、病型や重症度等に応じて治療を選択します。

【治療選択で見ること】

  • 脱毛範囲
  • 年齢
  • 病期・活動性

脱毛斑の大きさだけで治療法を自己選択しません。

円形脱毛症では医学的な重症度評価に基づいて治療を検討します。

抜毛症では抜毛行動への評価と心理・行動面の治療が中心になる

抜毛症では、毛を生やす処置だけでは抜毛行動が続けば再び脱毛する可能性があります。行動療法を含む心理的・精神医学的な治療が検討されます。

治療の視点 円形脱毛症 抜毛症
中心となる問題 自己免疫性の脱毛 反復する抜毛行動
主な診療 皮膚科 皮膚科で鑑別後、必要に応じ精神科・心療内科等と連携
治療方向 病型・重症度に応じた治療 行動への治療・心理的支援等
家族対応 病状・治療への支援 叱責せず治療につなげる支援

受診先は年齢や地域の医療体制によっても異なります。

抜毛症は毛髪だけでなく抜毛行動を治療対象として考えます。

本人が抜いているか分からない場合でも受診できる

本人や家族が抜毛行動を確認できていなくても、抜毛症を完全には否定できません。逆に、髪を触る癖があるというだけで抜毛症と決めつけることもできません。

【受診を考える例】

  • 不規則な脱毛と短い切れ毛が多い
  • 円形脱毛症か抜毛症か判断できない
  • 脱毛範囲が広がっている
  • 本人が抜毛をやめたいが繰り返してしまう

皮膚科では毛髪所見から鑑別し、必要な支援先を検討できます。

抜毛の自覚がはっきりしなくても、脱毛の原因確認から始められます。

子どもの脱毛では叱る前に原因を確認する

小児・思春期の斑状脱毛では円形脱毛症、抜毛症、頭部白癬など複数の原因が鑑別対象になります。本人が毛を触っている場面を見ても、脱毛の原因を家庭だけで断定しません。

【家族ができること】

  • 脱毛部の写真と経過を記録する
  • 毛を抜いているか問い詰めすぎない
  • 頭皮症状やほかの脱毛部位を確認する
  • 皮膚科で原因を評価してもらう

抜毛症が疑われた場合は、本人を責めず適切な治療・支援につなげます。

 
子どもの斑状脱毛は「癖」と決めつけず、まず医学的な鑑別を行います。

 

 

 

 

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