円形・楕円形に髪が抜けていると、円形脱毛症を思い浮かべやすいですが、白癬菌が毛髪に感染する頭部白癬(シラクモ)でも部分的な脱毛が起こります。
円形脱毛症は自己免疫反応が関わる脱毛症である一方、頭部白癬は真菌による感染症です。原因も治療も異なり、頭部白癬へ誤ってステロイド外用薬を使用すると悪化する場合があるため、見た目だけの自己診断は避ける必要があります。
この記事では、脱毛斑の見え方、フケ様の鱗屑、切れ毛、炎症、感染性などの違いと、皮膚科を受診したいポイントを整理します。
円形脱毛症と白癬による脱毛は何が違う?4つの基本
どちらも部分的な脱毛として見えることがありますが、原因も治療も異なります。見た目だけで自己診断しないことが重要です。
円形脱毛症は自己免疫反応が関わる脱毛症
円形脱毛症では、免疫反応によって成長期の毛包が主な標的となり、後天性の非瘢痕性脱毛を生じます。典型例では境界明瞭な円形から類円形の脱毛斑がみられます。
- 円形・類円形の脱毛斑
- 単発または多発
- 眉毛・睫毛・体毛にも生じ得る
- 頭皮症状が乏しい例もある
日本皮膚科学会の円形脱毛症診療ガイドラインは2024年版が公開されています。
円形の脱毛斑だけで原因を確定せず、他の脱毛症と鑑別します。
頭部白癬は白癬菌が毛に感染する病気
頭部白癬(シラクモ)は白癬菌が毛髪に寄生して生じる感染症です。日本皮膚科学会のQ&Aでは、楕円形の脱毛とフケ様の細かい鱗屑が主な症状として説明されています。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 原因 | 白癬菌 |
| 脱毛部 | 楕円形など |
| 頭皮表面 | フケ様の鱗屑 |
| 毛髪 | 折れやすい・抜けやすい |
感染した毛が皮膚表面で折れ、残った毛が黒い点状に見えることもあります。
白癬による脱毛は感染症としての診断と治療が必要です。
どちらも見た目が似ることがある
頭部白癬は円形脱毛症と誤認されることがあり、円形脱毛症ガイドラインでも頭部白癬は鑑別疾患の一つです。
- 部分的な脱毛
- 円形・楕円形に見える
- 切れ毛・黒点
- 頭皮表面の変化
一つの特徴だけで判断せず、毛髪・頭皮を合わせて診察します。
「丸く抜けた=円形脱毛症」と決めつけないようにしましょう。
治療が異なるため自己判断の外用薬は避ける
頭部白癬に誤ってステロイド外用薬を使用すると悪化し、炎症が強いケルズス禿瘡になることがあります。
- 自己判断のステロイド
- 市販の育毛剤
- 強い頭皮ケア
- 診断前の複数製品
円形脱毛症ではステロイド外用などが治療選択肢になりますが、白癬では同じ扱いができません。
似て見えるからこそ治療前の診断が重要です。
頭皮症状で比べる4つのポイント
頭皮表面や毛の折れ方は鑑別の手掛かりになりますが、症状だけで確定診断はできません。
鱗屑・フケ様の変化
頭部白癬では脱毛部に細かい鱗屑がみられることがあります。円形脱毛症は通常、自覚症状に乏しいことが多いものの、活動期には軽度のかゆみや刺激感、淡い紅斑を伴う場合があります。
- 細かい鱗屑
- 赤み
- かゆみ・刺激感
- 脱毛部の表面
「フケがあるから白癬」「症状がないから円形脱毛症」とは断定できません。
頭皮所見は複数の情報と合わせて評価します。
毛が途中で折れていないか
頭部白癬では感染した毛が折れやすく、黒い点状の毛が見えることがあります。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 長い毛 | 抜けているか |
| 短い毛 | 途中で折れているか |
| 黒点 | 毛の残りか |
| 周囲 | 鱗屑等があるか |
円形脱毛症でも断裂毛や黒点などがトリコスコピーでみられることがあり、黒点だけでは区別できません。
毛の状態と感染の検査を組み合わせることが大切です。
腫れ・膿・痛みがある場合
頭部白癬が強く炎症を起こしたケルズス禿瘡では、盛り上がり、膿、痛みなどが生じることがあります。
- 腫れ
- 膿
- 痛み
- 強い炎症
治療が遅れると瘢痕性脱毛につながる場合があるため、早期診断・治療が重要です。
強い炎症を伴う脱毛は早めに皮膚科へ相談しましょう。
自覚症状の有無だけでは見分けられない
頭部白癬でもかゆみが目立たない場合があり、円形脱毛症でも軽いかゆみや刺激感を伴うことがあります。
- かゆみなし
- 軽いかゆみ
- 刺激感
- 頭皮の見た目
「かゆい=白癬」「かゆくない=円形脱毛症」という二分法は避けます。
症状の強さだけで病名を決めないようにしましょう。
原因・感染性・広がり方の違いを4つに整理
円形脱毛症と頭部白癬では病態が異なるため、家族への対応や治療の考え方も変わります。
円形脱毛症は人にうつる病気ではない
円形脱毛症は自己免疫反応が関わる病気で、感染症ではありません。
- 自己免疫性疾患
- 感染症ではない
- 単発・多発がある
- 全頭・全身に及ぶ型もある
脱毛斑に触れたことで他人へ円形脱毛症が感染することはありません。
感染への不安と円形脱毛症の病態を混同しないようにしましょう。
頭部白癬は真菌による感染症
頭部白癬は白癬菌による感染症で、人や動物由来の菌が関係することがあります。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 原因 | 白癬菌 |
| 人との接触 | 感染経路になり得る |
| 動物 | 菌種により関係 |
| 毛髪・頭皮 | 感染部位 |
日本皮膚科学会Q&Aではトリコフィトン・トンスランスや、犬・猫に寄生するミクロスポルム・カニスなどが説明されています。
白癬が疑われる場合は感染症として医師の指示に従いましょう。
円形脱毛症は複数箇所に生じることがある
脱毛斑が1つの単発型だけでなく、複数生じる多発型、全頭型、汎発型などがあります。
- 単発型
- 多発型
- 全頭型
- 汎発型
生え際に帯状に生じる蛇行型など、円形とは限らない病型もあります。
脱毛斑の数・範囲・形態を記録しましょう。
白癬は接触歴も診断材料になる
家族、集団生活、競技、ペットなどとの接触情報が診断の手掛かりになる場合があります。
- 家族・同居人
- スポーツ等の接触
- ペット
- 発症時期
接触歴があるだけで白癬と確定するわけではありません。
受診時には心当たりがあれば医師へ伝えましょう。
皮膚科ではどう見分ける?4つの確認
診断では脱毛の形だけでなく、頭皮・毛髪の観察と、必要に応じた感染の検査を組み合わせます。
脱毛斑と頭皮を直接診察する
円形脱毛症では脱毛斑の形や活動性所見、頭部白癬では鱗屑や断裂毛、炎症などを確認します。
- 脱毛斑の境界
- 鱗屑
- 断裂毛
- 炎症
写真だけでは分からない頭皮表面の所見があります。
鑑別が必要な場合は対面での頭皮診察が重要です。
トリコスコピーで毛髪・毛孔を拡大する
円形脱毛症ではトリコスコピーが診断や活動性評価に使われます。頭部白癬でも毛の形態が鑑別材料になります。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 黒点 | 単独では確定不可 |
| 断裂毛 | 形態を確認 |
| 毛孔 | 周囲を観察 |
| 頭皮 | 鱗屑等 |
似た所見が複数疾患にみられるため、拡大像だけでなく臨床経過と合わせます。
トリコスコピーは鑑別を助ける検査です。
白癬が疑われれば真菌を調べる
感染症が疑われる場合は、毛や鱗屑などから白癬菌を確認する検査が行われます。
- 毛髪
- 鱗屑
- 真菌検査
- 必要に応じ追加検査
具体的な検査方法は症状や医療機関の判断によります。
白癬の確定には感染の確認が重要です。
鑑別が難しければ追加評価を行う
円形脱毛症ガイドラインでは、頭部白癬のほか抜毛症、瘢痕性脱毛症など多様な疾患との鑑別が示されています。
- 抜毛症
- 頭部白癬
- 瘢痕性脱毛症
- その他の脱毛症
非典型例では必要に応じ追加検査が検討されます。
病名を二択に限定せず他の原因も考えます。
受診を急ぎたい症状と受診前の注意4つ
脱毛斑がある場合、特に炎症が強い、拡大する、複数になるときは自己治療を続けず皮膚科で確認します。
腫れ・膿・痛みを伴う
ケルズス禿瘡など強い炎症性の白癬では早期治療が重要です。
- 腫れ
- 膿
- 痛み
- 急な悪化
治療開始が遅れると瘢痕性脱毛につながる可能性があります。
炎症性の脱毛は早めに受診しましょう。
脱毛斑が多発・拡大する
日本皮膚科学会は円形脱毛症が再発したり、徐々に多発・拡大する場合には早めの診察を勧めています。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 数 | 増える |
| 範囲 | 拡大 |
| 再発 | 繰り返す |
| 全頭 | 急速に進む |
急激に頭部全体へ脱毛する場合も早期の診察が勧められています。
多発・拡大する脱毛を長く自己判断で様子見しないようにしましょう。
自己判断でステロイドを塗らない
円形脱毛症ではステロイド外用が治療選択肢ですが、頭部白癬に誤用すると悪化することがあります。
- 手元のステロイド
- 家族の処方薬
- 育毛剤
- 刺激の強い外用
以前の皮膚炎に処方された薬を新しい脱毛斑へ流用しないようにします。
診断がつく前は治療薬の使い回しを避けましょう。
写真と接触歴を受診時に伝える
脱毛の経過、頭皮症状、ペットや接触スポーツなどの情報をまとめます。
- 発症時期
- 拡大の経過
- 頭皮症状
- 人・動物との接触
使用した外用薬があれば製品名も伝えます。
診断に役立つ経過情報を準備しましょう。







