自毛植毛について「移植した髪は一生抜けない」と説明されることがありますが、意味を正しく理解する必要があります。移植毛も毛周期に沿って抜けて生え替わるため、1本の毛が抜けずに残り続けるわけではありません。一方、AGAの影響を受けにくい後頭部などの毛包を移植することが、自毛植毛の重要な考え方です。
この記事では、自毛植毛した髪が抜ける仕組みと、移植毛・既存毛の違い、術後に薄く見える場合の考え方を解説します。
自毛植毛した髪は抜けない?
「移植毛は長く保たれる」という説明は、毛髪が脱落せず同じ毛のまま残り続けるという意味ではありません。毛髪には成長と脱落を繰り返す毛周期があり、移植後に生着した毛包から生える髪も抜け替わります。
移植毛にも毛周期がある
髪は成長を続けたあと休止期などを経て抜け、毛包から再び成長するという周期を繰り返します。自毛植毛後もこの生理的な抜け替わり自体は起こります。
移植するのは毛髪だけではなく毛包を含む組織
自毛植毛では、自分の後頭部などから採取した毛包を含むグラフトを薄毛部分へ移植します。表面に見えている毛を単に別の場所へ差し込む施術ではありません。
移植直後の毛が抜けても結果を即断しない
術後には移植部の毛がいったん脱落することがあります。手術後の経過には個人差があるため、抜けた毛の本数だけで生着の成否を自己判断せず、施術した医師の指示に従って経過を確認します。
移植毛と既存毛は何が違う?
移植毛と既存毛の大きな違いは、どの部位の毛包に由来するかです。日本皮膚科学会も、自家植毛術をAGAになりにくい後頭部の毛を前頭部や頭頂部へ移植する治療として説明しています。
移植毛は後頭部などから採取する
AGAでは前頭部や頭頂部の毛が影響を受けやすい一方、後頭部などには比較的その影響を受けにくい毛が残ります。自毛植毛では、このような部位をドナーとして利用します。
既存毛にはAGAが進行する可能性がある
移植先にもともと生えていた既存毛は、AGAの影響を受ける毛であれば、その後も細く短くなる可能性があります。移植毛が残っていても周囲の既存毛が減ることで、全体として薄く見えることがあります。
移植毛と既存毛を分けて経過を見る
植毛後の見た目は移植毛だけで決まりません。既存毛の状態やAGAの進行も関係するため、術後は移植部だけでなく頭髪全体の変化を確認することが重要です。
自毛植毛後に薄く見えることがある理由
術後に薄く見えたからといって、ただちに「移植した毛がすべて失われた」と判断することはできません。時期や部位、既存毛の変化を分けて考える必要があります。
術後の一時的な脱落がある
移植した毛の軸が術後に脱落し、その後に毛包から毛が成長してくる経過があります。術後の見え方は時間とともに変化するため、医療機関から説明された経過観察の時期を守りましょう。
周囲の既存毛が変化する
AGAそのものが進行すれば、植毛していない既存毛が細くなる可能性があります。移植部分だけに注目すると、薄く見える原因を取り違えることがあります。
生着や仕上がりには個人差がある
日本皮膚科学会の2017年版ガイドラインは、自毛植毛について高い生着率を記載した報告を紹介する一方、AGAに対するシステマティックレビューやランダム化比較試験が実施されていないことも示しています。結果を保証された治療として扱うべきではありません。
植毛後もAGA治療を相談する理由
自毛植毛を受けたからといって、移植していない既存毛のAGAまで止まるわけではありません。今後の薄毛の進行を含めた治療計画が必要です。
既存毛の維持を考える
AGAの状態によっては、フィナステリドやデュタステリド、ミノキシジル外用などの治療を医師と相談します。植毛後にどの治療を使用するかは個別に判断されます。
自己判断で薬を中止しない
植毛を受けたことを理由に、それまで使用していたAGA治療薬を自己判断で中止しないでください。術前・術後の薬の扱いは施術医や処方医へ確認します。
長期的な見た目を計画する
将来のAGA進行を考えずに移植範囲だけを決めると、移植毛と既存毛の分布が不自然に見える可能性があります。ドナー量も有限であるため、長期的な計画を医師と相談しましょう。
参照資料:日本皮膚科学会ガイドライン2017年版、国税庁「医療費控除」、NHS「Hair transplant」