自毛植毛後に、移植部の周囲やドナー部に残っていた髪が一時的に抜けることがあります。一般に「ショックロス」と呼ばれる現象です。ショックロスは移植した毛そのものの一時的脱落とは区別され、主に手術部位の周囲にある既存毛が一時的に抜ける現象を指します。
この記事では、自毛植毛後のショックロスがいつごろ起こり、どのような経過をたどるのか、受診時に確認したい症状も含めて解説します。
自毛植毛後のショックロスとは?
ショックロスは、自毛植毛の手術後に移植部周囲などの既存毛が一時的に脱落する現象です。医学文献ではrecipient-site effluviumなどと表現され、移植毛の通常の術後脱落とは分けて説明されています。
既存毛に起こる一時的な脱落
移植先にもともと生えていた毛が、手術をきっかけに毛周期の変化を起こして抜けることがあります。移植したグラフトがすべて失われる現象を意味するものではありません。
移植部だけでなくドナー部にも起こることがある
後頭部などの採取部でも、残っている毛が一時的に脱落することがあります。移植部のショックロスとドナー部の脱毛では、起こる場所や手術操作が異なります。
手術による刺激などが関係すると考えられている
文献では、毛包への直接的な刺激、炎症、局所の血流変化など複数の要因が関係すると考えられています。一つの原因だけで説明できる現象ではありません。
ショックロスはいつから起こる?
報告には幅がありますが、移植部周囲のショックロスは術後およそ2〜8週間の範囲でみられるとするレビューがあります。これは発症時期の目安であり、すべての人に起こる現象ではありません。
術後すぐとは限らない
手術直後ではなく、数週間たってから既存毛の抜け毛が増えることがあります。術後の時期と抜けている部位を確認すると、医師へ状況を伝えやすくなります。
個人差がある
ショックロスが目立つ程度や時期には差があります。すべての人に同じ程度の脱毛が起こるわけではありません。
移植毛の脱落時期と重なることがある
移植した毛の軸も術後2〜4週間ごろに抜けることがあるため、見た目だけでは既存毛のショックロスと区別しにくい場合があります。
ショックロスはいつまで続く?
ショックロスは多くの場合一時的で、文献では術後3か月前後から再成長が始まる経過が示されています。ただし、回復時期には個人差があります。
一時的な脱落では再成長が期待される
移植部周囲の一時的な脱毛について、術後3か月ごろから再成長が始まるとするレビューがあります。ドナー部の一時的な脱毛では3〜6か月で改善するとする報告もあります。
もともと細くなった毛は注意が必要
既存毛がAGAなどによってすでに細くなっている場合、ショックロス後に十分な密度へ戻らない可能性も指摘されています。「一時的な脱毛なら全員が同じ状態まで回復する」と断定はできません。
長引く場合は診察を受ける
説明された経過より脱毛が長引く場合や、脱毛範囲が広がる場合は施術した医療機関へ相談してください。AGA進行や別の脱毛症などとの区別が必要になることがあります。
ショックロスが気になるときの対応
診察時に伝えられるよう、次の情報を記録しておきましょう。
- 手術日と抜け毛に気づいた日
- 抜けている範囲と、同じ条件で撮った写真
- 痛み・赤み・膿などの有無と使用中の薬
術後の抜け毛を見て自己判断で薬を追加・中止したり、移植部を強く刺激したりせず、施術医へ経過を確認してください。
抜けている場所を確認する
移植した部分、移植部周囲の既存毛、後頭部などのドナー部のどこが薄く見えるかを確認します。可能であれば同じ条件で写真を残すと経過を伝えやすくなります。
術後指示を守る
洗髪や外用薬などの開始時期は、術式や医療機関の方針によって異なります。一般的な情報だけで変更せず、手術を受けた医療機関の指示を確認してください。
炎症や強い症状があれば早めに相談する
強い痛み、腫れ、膿、発熱を伴うなど通常の抜け毛以外の症状がある場合は、予定された経過観察日を待たず医療機関へ相談しましょう。
参照資料:Romera de Blasほか「Complications in follicular unit excision hair transplantation」(2026年)、「Recipient Area」(2019年)